初めに
人間が生命を維持するために栄養を摂取しなければならないということは誰もが自然と理解しています。
しかしその自然なことが高齢者になるにつれ難しくなっていきます。 だからこそ当たり前と思っている口から食事を摂取するということについてもう一度考える必要があります。
経管栄養の種類
胃ろう、腸ろう
胃ろうとは腹部に直接穴を開け管を通し、直接栄養剤を流し込む方法です。また腸ろうとは腸に穴を開け管を通し、直接栄養剤を流し込む方法です。どちらも誤嚥の心配がある方や食事を自力で口から食べられない方に行う方法です。
経鼻経管栄養
経鼻経管栄養とは管を鼻から胃まで通し、口を通さず直接栄養剤を送り込む方法です。経鼻経管栄養のメリットは胃ろうや腸ろうと違い腹部に穴を開ける必要が無いため体への負担が少ないという点です。
経静脈栄養の種類
中心静脈栄養
心臓に近い太い静脈に点滴を入れて栄養を摂取する方法です。中心静脈栄養のメリットは太い血管を利用して栄養を注入するためより高いエネルギーの栄養を一度に流し込むことができます。デメリットとしては心臓に近い太い血管にカテーテルを挿入するため、高い技術が必要なこと、また感染症などを引き起こす可能性もあります。太い血管であるほど体の重要な役目を担っていることが多くより慎重に施術する必要があります。
末梢静脈栄養
手や足の先の方に位置する血管から点滴等の栄養を注入する方法です。手足の末端の細い血管を利用するため施術の難易度は低めです。しかし、長期間に及ぶ点滴や高いエネルギーの栄養剤を注入することは血管がボロボロになってしまうため困難です。一般的にこまめに点滴の針の位置を入れ替え体の負担を和らげたりする処置が取られます。
口から食事をとるということの重要性について
私たちが当たり前に行っている「口から食事をとる」ということは、栄養を摂取するということ以外にもいくつかの重要な役割があります。
まず口から食事をとるためには、手を使って食事を口に運ぶ、口に入れた食材を歯と顎の筋肉などを使い咀嚼する。咀嚼の際に唾液を分泌し飲み込みやすくする。飲み込む際に喉を動かす。飲み込んだ後は各消化器官が働き食材を分解し吸収する。挙げていけばきりがないほどの働きが体の中で行われています。運動不足が続くと私たちの体は衰えるのと一緒で、食事を口からとらない期間が長く続くことで体内の様々な消化器官も衰えます。一度衰えてしまった器官や筋肉は高齢者の方であるほど回復までに時間が必要になってきます。衰えてしまったことで口から食事をとる際に誤嚥や消化不良などを起こし、さらに食事を口からとらなくってしまうなど負のスパイラルとなってしまいます。
また、人が食事をとるということはただ単に栄養を摂取するということ以外にも食事を楽しむという役割もあります。目で楽しみ、鼻で楽しみ、舌で楽しむ。食事が五感に訴える喜びは多岐にわたります。自由の利かない高齢者の方ほど食事を一番の楽しみにしています。
高齢者の経口摂取で気を付けること
誤嚥
高齢者の方の口から食事を摂取する際に気をつけなくてはいけないことに「誤嚥」があります。誤嚥とは飲み込んだ食材が気管に入ってしまう事を指します。最悪の場合、窒息や肺炎へとつながってしまい命の危険があります。経管栄養の時期が続いてしまうなどの状態かあら経口栄養に切り替わる際など、飲み込む力が落ちているときはとても気を付ける必要があります。高齢者施設などの食事では誤嚥を防ぐために食事にトロミを付けるなどの工夫をしているところもあります。
口腔ケア
口から食事をとるためには口の中の環境も重要になってきます。飲み込む力があっても歯がそろっていないと自力で咀嚼できません。また、口の中が清潔に保たれていないと細菌が繁殖し口の中や気管、肺などが炎症を起こしてしまいます。虫歯予防や感染症予防のためにも口腔ケアは意識的に行う必要があります。
高齢者の経口摂取で気を付けること
口から食事をとれなくなってしまった高齢者の方は、極端に体が弱っていく傾向にあります。経管栄養では生命の維持に必要な栄養素は取れても、体を元気に活動させるための栄養には不十分です。少しでも長い期間、口から食事をとって生活できるように元気なうちから口腔ケアなどを意識して生活しましょう。